古代祭祀の面影
天白磐座祭祀遺跡
●天白磐座遺跡。山頂部の巨岩群全景
伊勢参りからの帰途,浜松にある磐座祭祀遺跡へと足を伸ばしました。
天白磐座遺跡
渭伊神社(浜松市引佐町)境内の裏山にある大規模な巨岩群です。古墳時代から中世にわたる複合遺跡(※1)で,4世紀のものとされる勾玉類や祭祀土器が出土していることから,上古のころには神を斎き祀る磐座として祭祀が行われていたと考えられています。
古墳時代当時には森林に覆われていたのかどうかわかりませんが,鬱蒼とした木々と巨岩がコラボして神仙な雰囲気を醸し出していました。
●天に向かって聳える大木と巨岩
話によれば,この磐座祭祀遺跡の周辺地域には古墳も点在しており,遺跡から下った平野部には大規模な集落跡も発見されているそうです。
●数ある巨岩の中で,神が天から降臨する磐座と考えられているのがこの巨岩
井の国
磐座祭祀が行われていた頃,このあたり一帯は「井の国」と呼ばれ,中世以降に武家として活躍した井伊氏の祖先だともいわれる「井の王(きみ)」によって支配されていました。
“井”が示すように,渭伊神社(※2)のある聖域は元々,水神を祭っていたのだそうです。
確かに,天白磐座遺跡のある小山を囲むように神宮寺川の清流が流れています。
井の王(きみ)は,この地で水にまつわる祭祀を執り行わせていたのでしょうか。
(註)
※1 中世(平安後期)には巨岩群の中に経塚が営まれていたらしく,当時の経筒が出土しています。
※2 現在の祭神はホムタワケノミコトすなわち八幡大神。