山辺の道
布都の御魂坐す,石上神宮

●秋深まる境内を進む石上神宮の神職・巫女の行列(2012年11月15日)
この太刀を朝目よく汝取り持ちて 天つ神の御子に奉れ
この太刀は“布都御魂”と云ひ 石上神宮に坐す
(古事記 中つ巻を参照)
山辺の道の北の拠点ともいうべき,石上神宮は崇神天皇ことミマキイリヒコ王のころに創建されたと伝わる布留の古社。ここに鎮まる御神体は“布都御魂”という名の神剣。神代にはタケミカヅチノカミが所持し,その後,東征の途についた天孫族の首長イワレヒコ(神武天皇)が熊野で危機に陥ったときに高天原の神々から授けられたと記紀に語られる太刀です。
この太刀が境内の禁足地に埋納されているとの古くからの伝承をもとに,明治のころ,時の石上神宮の宮司が発掘調査したところ,言い伝えどおりに玉類とともに太刀が出土・顕現したとのことです。この太刀類は今,禁足地を拡張して建てられた本殿の中に納められているとのこと。

●月次祭当日の石上神宮の様子(2012年11月15日)
去る11月15日,石上神宮ではちょうど月次祭の日でした。朝10時,木の葉色付きはじめた境内を,神職の行列が,拝殿へと参進します。平日にもかかわらず,どこからともなく人々が集まり,拝殿での祭儀に見入っていました。祝詞に続いて,神楽の奉納など,祭儀の様子が拝殿の外からもよく見て取れます。
記紀にその名が記される神剣が見守り続けてきた布留の聖域,秋深まる中,石上独特の祭儀に,上古のころへと思いをはせた約30分でした。

●イチョウも色付き始めていました(2012年11月15日)
次回,山辺の道からは,イチョウもすっかり黄葉した石上神宮での鎮魂・新嘗祭の様子をご紹介する予定です。