さきたまに咲くや木の花

まほろば旅日記編集部 倭しうるはし担当

2013年04月11日 03:21



●丸墓山古墳を彩る花曇りの桜

さきたまに 咲くや木の花

       冬ごもり 今は春べと 咲くや木の花


(百人一首の替え歌)


厳寒の頃合,見事なサンセットを拝した,さきたま古墳群を再訪。
 去る3月最後の土日は,関東地方はあいにくの空模様。でも,桜は満開でした。ここ,さきたま古墳群(埼玉県行田市)も一帯が花曇り。霧雨したたる中,満開の桜をはじめ種々の花々が競演していました。
 こと,日本最大の円墳として知られる丸墓山古墳(上下写真)は,墳丘の上に桜の大木が数本あって,この季節,一際,人目を引くものです。ただ,休日にもかかわらず,急な寒さと悪天候ためか,あるいは朝食どきだからか,ほとんど人影はありませんでした。



●まさしく,『咲くやこの花』というフレーズがピッタリです


そして,と競演するのが黄色い菜の花

丸墓山古墳から東へ数百メートル先にある前方後円墳,将軍塚古墳は墳丘が菜の花に覆われていました。


●将軍塚古墳は墳丘の斜面が菜の花畑!


●盾型埴輪のうしろには円筒埴輪が規則的に並びます


そして,埴輪も復元されていて,ありし古のころのように,墳丘の段ごとに規則的に並べられているのです。

5世紀末から6世紀にかけての歴代の武蔵国造の王墓とも,出雲系の首長クラスの王墓であるともいわれる「さきたま古墳群」。埼玉県の県名にもなった「さきたま(埼玉)」とは,古神道にいう「幸魂(さきたま)」のことであるとも説明されます。これは神様の豊穣や恩恵をもたらす側面を言い表した言葉。「奇魂(くしたま)」と併せてヤマトの三輪山の鎮座する大物主神の別称だったりもします。



【木花開耶姫も坐す古墳群の古社】


●前玉神社(さきたまじんじゃ)の鳥居と満開の桜


さきたま古墳群の中にある円墳の頂に鎮座する前玉神社は,延喜式(10世紀)にも当時,既に存在していると名を記されている古い神社。
 祭神の名は「前玉比古命(さきたまひこのみこと)」と「前玉比売命(さきたまひめのみこと)」のだといわれています。古事記には大国主神の流れを汲むような譜系がわずかに記されていますが,さきたまの巨大古墳群に眠る王たちが信仰していた神だろうと考えられています。

そして,男女一対の主祭神が祀られている墳丘のふもとには,今が盛りの桜とも縁深い,木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)を祀る社殿があります。

前玉神社の境内は,花の女神が鎮まるに相応しく,種々の花々が咲き乱れていました。



●前玉神社本殿(墳丘)への登り口を彩る桜



●本殿(墳丘)への石畳には敷き詰めたように椿の落ち花


円墳そのものを祭祀場とした小ぢんまりとした境内ながら,

大地に豊穣をもたらす幸魂と,花の女神がコラボレーションしたかのように,

花色に飾られたさきたま王家の谷を今なお守る鎮守の光景でした。




●さきたま浅間塚古墳の頂上に鎮座する祠へと至る石段もまた花飾り

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